2016年3月1日

SOFC信頼性・耐久性向上のための研究

SOFC はその中心部がセラミックス材料で構成されているため,機械的な破損が心配されます。しかし運転条件での応力や歪みの発生は非常に複雑で,これまで精密な 解析が行われてきませんでした。当研究室では,NEDO委託研究として学内の複数の研究室と有機的に連携し,材料力学と物理化学を融合した解析の基盤整備 を進めています。
 このプロジェクトでは,下記の各研究室にまたがって装置等を配置し,有機的に連携をとりながら研究を進 めることで,『機械的解析」のバーチャルな研究拠点を形成しています。さらに,NEDOプロジェクトの枠内で企業・公的研究機関,大学と協力しながら,基礎データから実セルスタックの解析に至る幅広い課題を実施しています。

 

SOFCの信頼性を確保の共通基盤となる材料特性データの取得・整備 (工学研究科 湯上研,橋田研;多元物質科学研究所 雨澤研)

  SOFCに使われる材料には,結晶格子中の酸素イオンなどが一部欠損(抜け穴ができる)ものや,雰囲気に応じて酸素が出 入りするものがあります。これらの欠陥は,高温での機械的な特性や応力分布に影響を及ぼすため,運転条件と同じ温度・環境で測定された物理化学的・機械的 特性データが必要になります。ところが,そのようなデータはこれまでにほとんど発表されていませんでした。
 本研究プロジェクトでは,測定装置を改造・試作して,高温・雰囲気制御下での機械的特性の測定を行うことで,実用的にも,基礎科学的にも興味深いデータを取得しつつあります。
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材料力学・電気化学・固体化学を融合して,SOFCの挙動をシミュレーション (災害科学国際研究所 寺田研;金属材料研究所 久保研)

SOFCの起動停止や運転時には,材料間の熱膨張率の違いや,材料からの酸素の出入りに伴う体積変化によって,変形や応力の発生が起ります。これらの複雑な挙動をシミュレーションすることは,既存のプログラムでは不可能でした。そこでこのプロジェクトでは,共同研究によっ て材料力学的なシミュレーションに電気化学や固体化学の知見を導入したプログラムコードを開発しています。

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