論文が公開されました!(2025#8)

固体酸化物セルの電解質として注目されているスカンジア安定化ジルコニア (ScSZ) の機械特性を、粘弾性試験および一軸圧縮試験から評価した内容の論文が公開されました。

10ScSZは10mol%のSc2O3をZrO2に添加したScSZの代表的な組成であり、その結晶構造は蛍石関連構造です。低温では菱面体晶ですが固体酸化物セルの作動温度域では立方晶に結晶構造が変化します。同じく蛍石型構造をとるCeO2系の固体電解質はこの温度域で相変化をせず、弾性率は温度上昇に伴い単調に減少しますが、相変化を伴うZrO2系ではその相変化温度近傍で一時的に弾性率が減少すると知られていました。粘弾性評価からは、先の報告で知られている通り、相変化温度近傍での弾性率減少および内部摩擦の増大が確認されました。粘弾性評価で印加荷重の周波数を変化させると内部摩擦のピーク温度が変化しており、このピークの詳細な解析を行いました。また、菱面体晶をとる温度域にて行った一軸圧縮試験で残留ひずみが生じたことや、圧縮試験前後でSEM-BSEで確認できるコントラスト変化 (ドメイン変化) が確認できたことから、10ScSZは強弾性の特性を示すということが示唆されました。

デバイスの信頼性を担保していく上でシミュレーションがよく用いられますが、10ScSZを組み込んだデバイスではこの強弾性という特性を考慮する必要があるかもしれません。具体的にどのように機械特性を入力していくか、さらなる検討が必要です。

卒業生の桑折さんや木村先生、著者の皆様の力により、ようやく形になった論文です。

ぜひご覧ください!

Title: Ferro-Elasticity in Rhombohedral Crystals of Sc-Stabilized ZrO2

Authors: Mina Yamaguchi, Tomohiro Kori, Yuta Kimura, Satoshi Watanabe, Keiji Yashiro, Riyan Achmad Budiman and Tatsuya Kawada

Jouranl: ECS Journal of Solid State Science and Technology, 14 083002

DOI: 10.1149/2162-8777/adf6e2